Mitsuru nagai biography sample

Ferris mc autobiography tracklist 1001

バイエル&ブルクミュラー 30代から始めるピアノライフ

1曲目の予想は外れて、「エリーゼのために」だった。おお!エリーゼか。これも普通はプロのピアニストのリサイタルで演奏されることはないからなあ。生演奏が聴けて、ただただ嬉しかった。

弾き終わり、マイクを持ち、「今の曲をご存知ない方、どれくらいいらっしゃいますか。ご存知ない方は手を挙げてください」。誰も手を挙げず、会場に笑いが起こる。ここから終わりまでの2時間にわたって軽妙なトークが繰り広げられる。意外な気もしたのだが、考えてみたら元牧師さん(音大勤務の後)だったから、話はうまいのか。それに、配られたプログラムの長井さんの写真の下に、よく見ると「Mitsuru Nagai(ピアノ・お話)」とあって、元々、ピアノ+トークのイベントだったのか。

エリーゼは全員知っていたかもしれないけど、やはりライト層のお客さんもいて、こういう演奏会を成功させるのには、2つの要素が必要だと思う。

・分かりやすい有名曲を多めに入れる
・演奏の合間に曲の解説などを行う

今回もこの2つの要素が揃っていて、大成功のうちに終了となったんですが。

ちなみに、エリーゼを最初に持ってきた理由。今年はショパン生誕200年ということで、各演奏会ショパン一色となっているが、実はエリーゼが作曲されたのは1810年で、これも今年が200年目にあたるからとのこと。

こういった曲やその時代背景の解説などもあれば、ご自身のエピソードもあったのだが、その中から印象的なものを紹介したい。

1つは第1部最後の曲、「幻想即興曲」についてのトーク。終戦直後にNHKで東京・大阪・福岡の3箇所での演奏会を放送することになったが、自分よりも上の年齢の人達は皆戦争に行ってしまっていた。誰かピアニストいないのかとなった時に、大阪で名前が挙がったのが長井さんで、中学1年生だったそう。この時に弾いた想い出の曲が「幻想即興曲」とのこと。

第1部が終わった直後、私の席のそばで、「今の曲はなんという曲かご存知ですか」「幻想即興曲」といった会話が繰り広げられていて、非常に受けが良かったようだ。

それから、休憩後の第2部の2曲目、「葬送」についてのトーク。大学3年次に無理な練習から指を痛めて動かなくなってしまった。有名病院を転々としたが治らず、ピアニストになる希望を奪われて絶望した。大学4年次の6月1日に演奏発表をしなければならなかったのだが、指が動かないため、自殺を考えて薬を用意しておいた。しかし、演奏発表の直前に奇跡的に指が動くようになり、「葬送」はその時の復活の曲だそうである。

話をしていて、当時の奇跡を思い出したのだと思う。私が選ぶこの日のベストパフォーマンスは、この「葬送」。いわゆる「ゾーンに入った」演奏だと思った。

ここまでショパンが7曲続き、その後シューマン2曲。あっという間に時間が経ち、満足ではあったけれども、「やはりプロの演奏会でブルクはないのか」と思っていた矢先、

「今日はお子さんもたくさん・・・」
「!」

瞬間的に理解した。いよいよブルクの曲だ。ブルクから7~8曲ということで弾き始めたのだが、何を弾くのか、興味津々。

1番「素直」

2番「アラベスク」

3番「牧歌」

9番「狩」

10番「やさしい花」

(ほんの一瞬だけ間があって)

17番「おしゃべり娘」

(思い出したように戻って)

15番「バラード」

25番「貴婦人の乗馬」

やはり子供を意識した選曲で、私の勝手な期待としてあった12番「お別れ」13番「なぐさめ」24番「つばめ」は1曲も入らなかった。「つばめ」はともかく、子供向けに「お別れ」や「なぐさめ」はないか。

「アラベスク」と「やさしい花」が特に良かったと思った。どちらも、難易度的にはやさしいとされているけれども、実際にはそれだけに難しいという部分がある。「アラベスク」は粒をそろえて綺麗に高速に弾くのが難しいし、「やさしい花」はシンプルな旋律だけに聴き栄えのする演奏は難しい。シンプルなものは、粗が目立ちやすい一面もあるのだ。2曲とも、私は今取り組んでますからね。実体験に基づいて難しさを理解しているから、なおさら演奏の素晴らしさの裏側が分かる。

長くなったけど、ここで昨日のリサイタルの曲目が最終的にどうなったかをまとめておきたい(「長井充」で検索してこのブログに来ている人がたくさんいるので)。記憶に基づいているので100%正しいかは分かりませんが、たぶん大体合っていると思います。


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・エリーゼのために(ベートーヴェン)

・きらきら星変奏曲(モーツァルト)

・ノクターン1番(ショパン)
・ノクターン2番(ショパン)

・ノクターン20番(ショパン)
・バラード1番(ショパン)

・幻想即興曲(ショパン)
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休憩

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・華麗なる大円舞曲(ショパン)
・ピアノソナタ第2番第3楽章「葬送」(ショパン)

・トロイメライ(シューマン)
・飛翔(シューマン)

・素直(ブルクミュラー)
・アラベスク(ブルクミュラー)
・牧歌(ブルクミュラー)
・狩(ブルクミュラー)
・やさしい花(ブルクミュラー)
・おしゃべり娘(ブルクミュラー)
・バラード(ブルクミュラー)
・貴婦人の乗馬(ブルクミュラー)

・亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)
・月の光(ドビュッシー)

・ピアノソナタ月光第1楽章(ベートーヴェン)
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アンコール(?)

・お人形の夢と目覚め(エステン)
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さらに、次回に続く。
posted by rosewood at 00:29| Comment(0)| ピアニスト・演奏会| |